Nutanixのすゝめ 2021.12

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この記事は Nutanix Advent Calendar 2021 の12月25日分として執筆しました。

メリークリスマス🎁🎅今年のアドベントカレンダーもとうとうこの記事でラスト!多くのみなさまにご参加頂きましてありがとうございました。来年1月の Nutanix Meetup Online 22.01 ではアドベントカレンダー参加者のみなさまににLTをして頂く方向で準備を進めています(まだお声がけしていない方にも近々お声がけします…)。ぜひご登録ください。

この記事のゴール

Nutanixに関する様々な学習用リソースを知って頂き、読んだ方が具体的な学習ステップに迷うことなく進めるようにすることをゴールとしています。

この記事の想定読者

この記事は、下記の例をはじめとする様々な場面・立場でNutanix製品に関わり(これから関わるかもしれない)、実際に製品に触れる(これから触れるかもしれない)、主にインフラ寄りのエンジニアの方を対象としています。

  • Nutanix製品をユーザーとして自社に導入し利用する
  • Nutanix製品を顧客に提案・導入する
  • Nutanix製品を導入した顧客の環境で運用を請け負う

筆者自身がNutanix JapanのSE(顧客への提案や導入支援を行う部門の技術職であり、営業職のメンバーと行動を共にしているものの自身は営業職ではないので、営業職向けの学習方法や資格等はスコープ外となります。

また、Nutanixの販売パートナーになっていないと見られなかったり、Nutanix商用版を購入していないと見られなかったり、といったリソースに関しても今回の内容には含めておりませんのでご了承ください。


Nutanixについて学んでおくといいかもしれない理由

Nutanixについて学ぶ手段を紹介する前に、そもそもなぜNutanixについて学ぶことをオススメするのか、いくつかの観点で整理しておきたいと思います。

知的好奇心が満たされる

Nutanixの出発点であり根幹である ハイパーコンバージドインフラストラクチャー(Hyper Converged Infrastructure: HCI)を作り出した中心人物でありNutanix初代CTOのMohit Aron氏(現Cohesity CEO)は、元々Googleの大規模分散ファイルシステム Google File Systemを開発していデベロッパーでした。大規模システムの発想を上手くオンプレミスの普通の規模にパッケージングしたNutanixの仕組みは摩訶不思議な飛び道具でもなんでもなく、非常に合理的で、知れば知るほど「良く考えられてるなぁ…」と思えるポイントに溢れています。

そして幸いなことに、Nutanix HCIはプロプライエタリ(非オープンソース)な製品でありながら、そのアーキテクチャーに関する情報はかなり詳細に渡るまで公開されています。

インフラエンジニアとしてのキャリアに役立つかもしれない

Nutanixのエンジニア資格が米国グローバルナレッジ社が3,700人を対象に行った調査において「2021年版 高い給与を得られるIT資格トップ15」の第8位に入ったそうです。他にはAWS, Microsoft, Google, VMware, Cisco, Citrixなどの大手ベンダー系、PMP, Comptia Security+といった非ベンダー系の資格などが挙げられており、Nutanix資格は初のランクインです。あくまで米国における調査ですし、IT資格に対する価値観などの相違もありますので、資格を取ったからといって日本ですぐに給与がどうこうなるという話ではないかと思います。とはいえ、米国のトレンドは2-3年遅れで日本に入ってくることが多いので、日本でもNutanix資格の価値が高まる可能性はあるでしょう(というか我々が高めて行かなきゃいけないのですが)。

Nutanixユーザーとしての投資効果を最大化できる

Nutanixの中の人としては、お客さまにせっかくNutanix製品をお金を払って導入頂いたのであれば、ぜひ使い倒して頂きたいと思っています。Nutanixに同じお金を払って頂いていても、製品のことを熟知された方に使い倒して頂く場合と、製品のことをあまり知って頂けないままNutanix周りのことを全てアウトソースされてしまった場合、当然前者の方が投資効果も満足度も高くなるからです。

もちろん部分的にアウトソースするのが合理的なケースは珍しくないのですが(車に例えると…車を持っていてもタクシーに乗ったり、旅先でレンタカーを使ったりはしますよね)、Nutanixは運用負荷を下つつ、俊敏性を高めることができる、様々な機能を備えたIT基盤ですから、最新機能もりもりの車を乗りこなしていつでも好きな場所に行って好きなことをするかのように、お客さま自身にNutanixを使いこなして頂けるのがベストだと思っています。

長々と書いてしまいましたが、ここまでは前置きでした。


投資コスト別 Nutanix 学習手段

ここから本編。

今回は投資コスト別にNutanixの学習手段を紹介します。あくまで直接的な金銭の投資額で分類しますので、体力や時間などのコストは加味していませんのでご了承ください。

以下の説明に記載している言語については、日本語と英語の両方があるものについては「日本語」のみ記載しています。難易度については感覚値です。

無課金

Nutanix Japan公式YouTubeチャンネル

https://www.youtube.com/nutanixjapan
言語: 日本語, 難易度: ★~★★
Nutanix Japanの運営しているYouTubeチャンネルです。Nutanix Meetup等の過去のイベントセッションのアーカイブ、Nutanixの簡単操作シリーズ(短編デモ)、日本語字幕付き英語動画などがオススメです。私も運営メンバーの中の人の1人なので、チャンネル登録して頂けると小躍りします。

Nutanixバイブル

https://nutanixbible.jp/
言語: 日本語, 難易度: ★★~★★★★
Nutanixのアーキテクチャーに関する詳細解説です。アーキテクチャーに関してはとりあえずこれを読んでおけばOK。日本語版の元になっている英語版のThe Nutanix BibleはNutanixのPrincipal Solutions ArchitectであったSteven Poitras氏が書き溜めていた個人サイトだったものが公式化されたものです。現在、英語版と日本語版でサイトデザインが異なっていますが、内容に関しては随時追従しています。(Special Thanks @gowatana さん)

Nutanix Test Drive

https://www.nutanix.com/jp/one-platform
言語: 英語, 難易度: ★~★★
Nutanixの製品をオンデマンドで一定時間、オンライン体験できる無料サービスです。HCIだけでなく、ハイブリッドクラウド、ユニファイドストレージ、マイクロセグメンテーション、オートメーション、DB as a Service、バックアップなど、様々なシナリオが提供されています。ガイドツアー機能もあるため、初めての方でも実際のNutanixのUIを使用した操作を体験して頂けます。時間切れになると環境はリセットされてしましますが、再度申し込めば何度でもお試しいただけますのでお気軽に。ただし、各製品のコンセプトや大まかな機能を知らずに操作をなぞってしまうと「自分は今何をしているんだ…?」という気持ちになってしまう可能性があるので、YouTubeやNutanix Universityで製品紹介の動画を見てからのほうが良いかもしれません。

Nutanix University

https://www.nutanixuniversity.com/
言語: 英語, 難易度: ★~★★★
Nutanix公式のeラーニングサイトです。My Nutanixアカウントがあれば閲覧可能です。英語のみでの提供となっていますが、HCIに限らずNutanixの幅広いソリューションの関するコンテンツが無料で提供されていますので、是非一度ご覧ください。 My Nutanixアカウントの作成は、フリーメールアドレスのドメインだとNGなので注意。お仕事用 or 個人で持っているプロバイダーやレンタルサーバーに付いてくるメールアドレスなどをご利用ください。

Nutanix Patents

https://www.nutanix.com/legal/patents
言語: 英語, 難易度: ★★★★★
Nutanixの取得している特許の一覧です。製品のベースになっている技術的な背景を探れる資料が読めます。ここに乗っているPatent NumberをGoogle Patentsで検索すると特許資料が出てきます。

日本国内の先人たちのブログ

言語: 日本語, 難易度: ★~★★★★
Nutanix Advent Calendar 2021 でも多くの皆さまに記事を投稿いただきましたが、日本語でNutanixに関するブログを書いてくださっている方がたくさんいらっしゃいます。Google検索した際にもよくヒットするかと思いますが、アドベントカレンダーから辿って色々眺めてみると、新しい発見があると思います。

特に多くの情報を発信して頂いている Nutanix Technology Champion 2022受賞者のみなさまのブログはこちら。

Nutanix Japanによる海外ブログ翻訳

https://next.nutanix.com/search/activity/topics?userid=88950
言語: 日本語, 難易度: ★★~★★★★
Nutanix JapanのProduct Marketing ManagerであるTetsuo Miyoshiさんがリードしてくれている、英語のNutanix関連ブログの翻訳記事です。私も時々お手伝いさせてもらってます。ネタ元としてはオーストラリア在住、NutanixのPrincipal Architectである Josh Odgers アニキのブログ CloudXC が多め。バチバチの競合比較ネタがわりと多いです。

NEXT Community 日本語フォーラム

https://next.nutanix.com/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%83%A0-70
言語: 日本語, 難易度: ★~★★★★★
Nutanixの本社が運営している公式のフォーラム内にある、日本語コーナーです。何か質問があれば、先人が答えてくれるかもしれません。商用版を使っていればサポート窓口を利用するのが通常なので、Community Editionの話題が中心になっています。場の性質上、Nutanix社内/社外を問わずボランティアなので「なんでもは知らないわよ 知ってることだけ」という対応になる点はご容赦ください。すでに答えを知ってればポンと答えてくれるかも、ぐらいの感じで。英語フォーラムのほうに足を延ばすと、世界中の人から回答をもらえる可能性がある(参加者の母数が多い)ので、そちらを使ってみるというのも手です。

Nutanix Meetup

https://nutanix.connpass.com/
言語: 日本語, 難易度: ★~★★★★
Nutanix Meetupは、技術好きエンジニアのためのNutanix勉強会です。主催は一応Nutanix Japanですが商売っ気なしで、技術好きの登壇者が、技術好きな人のために、楽しい技術の話をする、という感じです。ビジネス的にはNutanixに直接関わっていないけれども、Nutanixのことが気になるなー、知りたいなーという方は気軽にご参加ください。過去の発表資料へのリンクもあります。

微課金

書籍

言語: 日本語, 難易度: ★~★★★★, 費用: ~4,000円

さんざん無課金の手段を紹介したあとですが、入り口として圧倒的にオススメなのは書籍『Nutanix Enterprise Cloud クラウド発想のITインフラ技術』です。時間と学習効率を考えたら、絶対コレがいいと思っています。

学習効率を高めるうえで重要なことの1つが「正しい順序で学ぶ」ことです。正しくない順序で学ぶと、学んでいる過程で知らない用語が出てきて、それを調べていると、またその先に知らない用語が…ということが高頻度で発生します。この書籍は、用語や知識の依存関係・前後関係を考慮したうえで、基礎から順に実践的なところまで学べるように構成されています。そのため、先頭から読んでいくことで、正しい順序で手戻りのない学習をしやすくなっています(もちろん、一度読んでも覚えられなかったりすることは多々あるので、その場合は戻ることもあるかと思います)。

SB C&S 株式会社 著、Nutanix Japan協力、という体制で制作されましたが、なんとSB C&Sさんの著者全員がNTC(Nutanix Technology Champion)受賞歴のあるメンバーなんです。また、制作をお手伝いしたNutanix JapanのメンバーもNutanix Meetupにご参加いただいている方にはおなじみの顔ぶれが多いかと思います。

出版されたの2019年5月なので…もう内容が古くなっていて役に立たないのでは?と心配される方もいるかもしれませんが、大丈夫です!この書籍に書かれている内容は今でも9割以上そのまま使えます。Nutanix HCIは根っこのコンセプトが幸いにして良くできており、当初から軸がぶれていません。少し変わってしまった部分があるとしても、基本的に機能改善などで便利になっている個所なので、知識のベースとしてこの書籍の内容を身に付ける価値は今でも間違いなくあります。

重課金

Nutanix Community Edition シングルノード構成

難易度: ★★~★★★★★, 費用: 50,000~

Nutanixには無償で利用できるCommunity Edition(以下CE)が存在します。

2015年にリリースされて以来、おうちNutanix環境としてご愛顧頂いていますが、2020年にリリースされたCEの最新版であるce-2020.09.16ではインストーラーの仕組みが変わったこと(&デバイスドライバーの対応漏れ)が原因で、インストールしてあっさり動いてくれる確率が下がってしまいました(その代わりESXiでもCEが動くようになりました)。

難易度は、インストールさえあっさり成功すれば★★、そうでない場合は私の資料を見て頂きながらあれこれ解決を模索することになり、★が増えます…。この資料に載せていないありがちなエラーとして、新しめのIntelオンボードNICが認識されないという問題もあります。その場合は結構根深いのでNEXT Community 日本語フォーラムまでお越しください。

費用は使用するハードウェアのスペック次第ですが、メモリについては64GB程度積めると嬉しいところ。メモリがたくさん積めて、お安いマシン、という方向性で探すといいと思います。どんな構成でも適当に入れれば動く、という感じではないのでこちらの資料を参考にしてください。

廃課金

Nutanix CE マルチノード構成

難易度: ★★~★★★★★, 費用: 150,000円~

12/9のアドベントカレンダーでも書いたとおり、Nutanix CEはマルチノード構成にも対応しています。また、マルチクラスターで連携させることも可能です。マルチノード構成のリソースがあれば、Nutanixのかなり幅広いソリューションを自宅でも動かすことができます。インストールや構成の難易度も、シングルノード構成の場合と大差なく、とにかくインストールさえ乗り切ってしまえば、あとはリソースが足りている限りは各種機能を簡単に利用できます。

CEを触る際に日本語ドキュメントを参照したい場合はこちらからどうぞ。

商用版

最近ヤフオクとかで古いNutanixブランドのHWが出品されているのを見かけるのですが…個人的にはあまりオススメしません。なぜなら、Nutanixって実体はすべてソフトウェアなので、HW自体はごく普通の何の変哲もないサーバーだからです。そして、NutanixブランドのHWを中古で買っても商用版Nutanixソフトウェアが付いてくるわけではありません(契約していないので)。もちろん、商用版Nutanixが動くHWなら、CEもあっさり動く可能性は高いですが、メリットとしてはその程度だと思います。あと、2U4ノード集約筐体は40Kgくらいあるし、ファンの回転速度も高くので、ご自宅用には向かないです。

ええっ、商用版を新品でご自宅に…?そこまでするなら、お金を払ってNutanixを触るのではなく、お金を貰ってNutanixを触るほうがオススメです。 社内にはいつでも触れる商用版の環境がありますので。とはいえ、希望の職種で募集あるかはタイミング次第です…。また、実際の選考は、希望職種と本人のキャラクターや経験とのマッチング、という観点もありますし、私には何の決定権もないので断定的なことは言えませんが、上記の無課金~重課金ぐらいまでをこなして来られた方であれば、Nutanixに直接関わる業務経験がなくても、熱意と知識の面で十二分だと思います。Nutanixで働くってどんな感じ?この職種は何?といった話を聞いてみたい方は、Twitter等で私宛に話しかけて頂ければと。

Nutanix or ヤギ のことををつぶやきます。